手放した機材のお話【11】(順不同)

AIRCRAFT AC-5 春畑道哉モデル

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TUBEの春畑さんが『Live Around Special96 Only Good Summer』のスタジアムツアーでメインで使用していたド派手なシグネチャーモデル。

 

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【Live Around Special96 Only Good Summerより】

 

LIVE AROUND SPECIAL'96 ONLY GOOD SUMMER [Blu-ray]

LIVE AROUND SPECIAL'96 ONLY GOOD SUMMER [Blu-ray]

  • 発売日: 2013/07/17
  • メディア: Blu-ray
 

 

 

80年代後半から90年代前半にかけて、スクエアの安藤さん、DIMENSIONの増崎さん、土方隆行さんなど、スタジオミュージシャン系の間でモリダイラ楽器のプロデュースするブランド『AIRCRAFT』はちょっとしたブームになりました。

 

復刻しましたが、あれは名前が同じの別のギターです。工房もモーリスの工房ではなく、某国内有名ギターメーカーに委託されています。(国内の某二文字のメーカーだったはず…?)

 

もちろん新しいAIRCRAFT、決して悪いものではないです! むしろ昔のAIRCRAFTより、ギターの精度としては良いものだと思います。しかしながら昔のAIRCRAFTを知っている人には、良いところも悪いところも含めてモーリス時代のAIRCRAFTで、今のモデルは全く別のものに感じられると思います。(実際に別物なので当然ですが)

 

当時のギタマガに掲載されていた記事によると、それまではFERNANDES製のものを使用していた春畑氏は、DIMENSIONの増崎氏から勧められ使用するようになったそうです。

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春畑モデルは最終モデルのジャガータイプのAC-6まで、様々なカラー、PUタイプ、ヴァリエーションが製作されました。しかしながら基本はFRT仕様。

 

初期はいかにもスタジオミュージシャンっぽいEMGのSSH仕様、3ミニスイッチが付いている、無理やりリアにダンカンのパッシブと、フロント・センターにEMGのSAを混在させたちょっと変わったモデルから始まり、段々とステージ映えするような派手なモデルになっていきます。

 

初期のAC-5春は他モデルのラインナップで、メイプルトップ・マホガニーボディバックのモデルがありました。マホとメイプルの比率が50:50というかなり贅沢な仕様でした。当時を知る方から聴く話によれば、「横山氏曰く「メイプル貼るならこれくらいにしないと音に影響しない」って言っていた」とのこと。

 

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ミュージックステーションより】

 

 

 

【そもそも春畑さんとの出会い】

僕は上京して初めてのバイトに、ライブの警備を選びました。

 

もともと好きだった音楽に接することができて、拘束時間は長いものの、リハから見られるというバイトはとても刺激的だったのです。当時は、B'zのLOOSEのツアーやBUCK-TICK徳永英明さん、長渕剛さん、そうそうたるメンバーのライブ警備をして、リハから見ることができました。余談ですが、当時のガキ使のロケ警備などもあって、ど田舎から上京したばかりのボウズにとっては、非常に刺激的な日々でした。

 

ちょうどその中、春先のTUBEのホールツアーの警備に当たるチャンスが得られました。武道館で行われたアルバム『Only Good Summer』をひっさげての『Only Good Times』のタイトルを冠したツアー。

 

 

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それまでは春畑道哉という名前は知っていたもの、それほど興味があるギタリストではなかった。(ああ、TUBEの人だよね…はるばたけ…さん??)くらいの印象だった。だがライブで聞こえてきたのは、ヒットチャート常連の歌謡ロック・バンドというイメージでは収まらない、最高にハードロックしたサウンドだった。

 

僕はそのホールツアー(今となっては2回警備したか3回警備したか思い出せないが…)もうそれだけで春畑道哉というギタリストにガッツリハマってしまった。18歳の僕は武道館のそのライブで今現在までの「ギタリスト人生の半分」を捧げてしまうほどの影響を受けたギタリスト、春畑道哉氏と衝撃的な出会いをしてしまったのである。

 

 

【AIRCRAFTとの出会い】

僕は96年に上京し、専門学校時代は毎日のように学校終わりには渋谷のイケベ楽器へ遊びに行っていた。今はもう跡形もないが1Fにはメガネドラッグ、その上は釣具の上州屋があるビル、その地下にあった頃のイケベ楽器へ毎日のように寄っていた。(B'zの「野性のENERGY」のPVで出てくるところ)

 

壁に吊るされたAIRCRAFTのギターのうちの一本、「去年買ったLive ビデオで見まくって憧れたあのギターがあるじゃないか!!!」僕はそのまま試奏も軽めに済まし、人生初のローンを組んだのでした。

 

その頃いつもつるんでいた友達、今では音響監督として多くのゲームの収録に携わっている友達の小泉豊くん(今現在、中国のゲームファンの間で一番有名な音響監督だそうだ!すごい!)は「こんちゃん、マジかww」と興奮気味に突っ込んでいたのを覚えています。

 

 

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春畑道哉氏、直筆のサインが入っている。

 

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Music Manを連想させるような、細く握りやすいネック。薄いのではない、細いのである。むちゃくちゃ握りやすかった。本当にこのギターを買ってからというもの、練習した、練習しまくった。

 

浪人し、大学に入ってからも寝る間も惜しんで、ウトウト寝落ち寸前の状態で春畑さんの繰り出す、独特な音並びの速弾きの練習をしていた。僕は1997年から10年間ほど、春畑さんのようなギタリストを目指してではなく、春畑道哉』になりたかった

 

ピッキングや姿勢、ステージング、ギターを持つ角度、彼がTUBEで披露するステップまで…完全に本人に近くなるように鏡を見ながら真似たものです。

 

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 24年使っても全くサビやくすみの来ないFRTユニット。錆びてるのは、本体以外のパーツ。

 

 

【別れの日…】

 

一生連れ添うと思っていた、そんな思い入れのあるギターでしたが、2021年3月18日についにお別れとなりました。

 

シグネチャーモデルというのは、買ったときには非常に嬉しいものですが、自分のオリジナルトーンを探しているときには、これほどモデルの方の個性が邪魔になるものはなく、どこに行っても「春畑さん好き」というフィルターを通して見られてしまう…。

 

それはオリジナルトーンを探している者にとっては致命的でした。昔の好きだった気持ちは、段々と自分を縛るものになっていったのです。

 

私はトモ藤田さんをリスペクトするようになり、またトモさんリスペクトのインストラクターに習ったりするようになるうちに、自然とプレイスタイルも歪みも変化していきます。

 

段々とこのギターはサブに回ることが多くなり、当時習っていた先生からは「これを手放して、新しいギターを買ったらどうか」と勧められたこともあって、「今、現役で春畑さんを大好きな方にもっともっと使ってほしいな…」と去年くらいから思い始めていました。

 

そこへ手放すことを後押しする決定的な出会いが起こります…。

 

ギタリスト大江康太くんとの出会いでした。和製デレクという呼び方が正しいかはわかりませんが…、強烈な個性とトーンで僕にガツンと衝撃を与えてくれました。僕は今まで一度も欲しいと思ったことのない、Gibson SGがほしいという欲が出てきてしまいました。そしてそれは、AIRCRAFTの春畑さんモデルを手放そうという、最終的なきっかけになりました。

 

 

 

2020年の年末から、ヤフオクに出品するため下書きを書いては消し、書いては消し…3ヶ月ほど迷ったでしょうか。

 

そして3月になった頃、ついに出品。 

 

しかし、驚くべきことに、1時間もしないうちに即決価格にて落札されました。

 

 

 

落札者さんとのメッセージやりとりで「ずっと探してたんです!!」と、興奮気味にメッセージをくれました。(あまりにも落札が早すぎる、転売屋だったら嫌だな…)と少し不安な気持ちもふきとび、心から嬉しかったです。

 

本当に好きな人に買っていただけました。24年もの間、苦楽をともにし、大切に使ってきたギターの第二の人生を最高のスタートを切らせてやれたと、心の底から思えました。

 

もう思い残すことはありません。ありがとう、さようなら!

 

AIRCRAFT AC-5!!!!

 

僕のギター人生の半分以上を一緒に過ごしたギター!!!

 

本当に感謝しています!!!文章書きながら泣きそう!!笑

 

 

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今ではYOKOYAMA GUITARSで日本屈指のアコースティックギターのルシアーとして名を馳せる、横山正氏の直筆サイン。

 

 

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 当時の雑誌の広告、この推しよう。イケベの力の入れ具合の凄さ。